世界はオレンジ色に染まり - ピイ・ミャンマー 2004

  - ピイ

 バゴーからはヤンゴン経由で今度はピイという北部の小都市に向かった。この町では特に何かを見たいという訳でもなく、更にここから北にあるバガンという古都への中継地点として立ち寄る、というだけの目的であったのだが、ここはとても思い出深い町になった。

 ピイに向かう際バゴーで別れた○山さんから「ヤンゴンから6時間位バスで走ると町の真ん中に馬に跨ったアウンサンの像が現れるのでそれを目印に、それがピイの町です」と教えられていた。アウンサンとは、そう、言わずと知れたビルマ建国の父、スーチー氏の父親の事である。

 2時PMにヤンゴンを出発したバスは8時PM頃ピイの町へ到着。○山さんが教えてくれたようにそこには道路の真ん中に黄金色に光輝くアウンサンの像があった。

 宿はバスを降りてすぐ - アウンサン像の近く - のところに見つけた。ここでは2泊程して直ぐにバガンに向かう予定だ。到着した翌朝、バスターミナルにチケットを取りに行こうとしていたところ、宿のおやっさんがバスターミナルの近くに用事があるので、バガン行きのチケットを一緒に買ってきてくれるというので、頼むことにした。

 というのもバスターミナルまでは宿から少しばかり離れた場所にあり、そこまで行くタクシー代をケチった訳であるが、、
 バスターミナルから戻って来たおやっさんは「明日のチケットは満席で取れなかった、なので明後日のチケットを買ってきた」などと言う。そうか、そもそも宿の人にしてみれば長く滞在してもらいたい訳でもあるし、1日延ばした明後日のチケットにしたのかも、なんて思いもしたが、本当に翌日のチケットが満席だったのかどうかは調べようもない。やはりチケットは自分で買いに行けばよかったとちょっと思いもしたが、後悔(という程のものでもないけど)先に立たず、である。

 こんな小さな町に3泊しても特にやる事もなさそうであるが、まぁ仕方がない。ここからちょっと離れた場所にメガネを掛けた世にも珍しい仏陀で有名な寺院があるようなので行ってみようかとも思ったが、残念ながらこの時は修復中らしく公開しておらず、それならばと宿の近くのシュエサンドーパゴダ(巨大な仏陀が町を見下ろしている寺院)に行く事にした。

 因みにこのシュエサンドーパゴダは、ヤンゴンのシュエダゴンパゴダ、バゴーのシュエモードーパゴダと合わせ、ミャンマーの3大パゴダらしく、図らずもこれでミャンマーの3大パゴダ、全制覇となった。

 さて、更に翌日は本当にやる事もなく宿の近くでお昼を食べたり、屋台でスイカを買って食べたりしてやり過ごし、涼しくなり始めた夕方頃あてもなくぶらぶらと歩いているといきなり大きな川に出た。 - どうやらミャンマーでも有名なイラワジ川のようである。宿から歩いて直ぐのところにこんな大きな川が流れていたとは、驚いた。

 暫くすると近所に住む人々なのか、沢山の人々が川に集まり始めた。インドであれば沐浴でも始めるのであるかもしれないが、ここはミャンマーである。 - 大人たちは川で洗濯を始め、子供たちは川遊びを始めだした。10代位の男子達は元気に川に飛び込んだりとみな思い思いの行動を始め、あぁこの川は地元の人達の大切な生活の場なんだなぁと思わせる、そんな光景だった。

 偶然とは言え、ここの場所に来る事が出来て良かった。もし、何の問題もなく昨日バスのチケットが取れていればここは知らずに次の町に行っていた事になるであろう、そんな事を思うと宿のおやっさんにも感謝である。

 そして世界は段々とオレンジ色に染まり始めた。

 そんなオレンジ色の光景の中、犬も微動だにせずに夕景の中、佇んでいる - 思わず犬も見とれるほどの素晴らしき夕景だ。因みに対岸に砂嵐のようなものがこの時既に発生しており、この後、町をその砂嵐が襲い夜8時頃には停電になってしまった。そんな事になろうと知る由もなく、この時は対岸に何か竜巻のようなものが見えるなぁ位に思っていた。

 そしてここではもう1つ大切な出会いがあった。小学生に上がったばかり位の姉2人と小さい男の子の3人姉弟である。水辺でバケツを持って走り回る姉、そして姉弟で仲睦まじく話をしている姿は実に幸せそうであった。

 写真を撮っている内にこの姉弟とも仲良くなり、彼等はこの川の近くに住んでいたのだけれど、日も暮れ始め、私も宿に戻ろうとしていたところ、彼等の家の前を通った時に3人並んで私に向かって「タター、タター(ミャンマー語でバイバイの意)」とずっと手を振って見送ってくれた。

 この時の3人並んで必死に私に手を振ってくれた光景は今でも忘れる事ができないし、あれから随分経った今、彼等は今頃どうしているだろう、そんな事をよく思う。

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