大林宣彦さんを偲んで~尾道の旅2008

 2020年4月10日、映画監督の大林宣彦さんがお亡くなりになりました。
謹んでお悔やみを申し上げると共にこれまで素敵な映画を沢山!ありがとうございました。

 私が最初に大林さんの作品を観たのは確か小学3年生の頃-その頃はもちろん、大林さんの作品だから観たいと言ったものではなく、3歳上の姉が当時上映されていた原田知世さん主演の「時をかける少女」を観たいとの事で、その頃、我々家族は長崎県の平戸という島に住んでのだが、映画を観るべく父親が姉を連れて1時間半ほど掛けて佐世保市まで出掛ける-平戸には映画館がなかった-事になり、私はどちらかと言うと映画観たさ、と言うよりも、父と姉に付いて行ってちょっとした旅行気分を味わいたかっただけという理由で映画館に行く事になった。

 なので、当時の記憶としては、映画を観てどう思ったとか、はっきり言ってほぼほぼ記憶にないのだが、映画の断片断片はかろうじて何となく覚えている程度で、面白かったとも言えるし、何だかSFチックな不思議な映画だったなぁと朧気な記憶がちょっとある位である。

 いずれにせよ、それが私と大林作品との出会いであった。

 大林作品で私が好きなのは、何と言っても尾道3部作の3作目で富田靖子さん主演の「さびしんぼう」-前編に流れるショパンの「別れの曲」、そして尾道や因島の美しい景色、それよりなによりも富田靖子さんが美しい!
何度でも観たくなる素晴らしい作品です。

 もう1つ好きな作品は、新・尾道3部作の1作目として作られた石田ひかりさんの映画デビュー作「ふたり」-音楽は久石譲さんという事もあり、冒頭の尾道の街を引きで撮ったシーンはどこか、ジブリの魔女宅の世界を思わせるような世界観-私見ですが-があったりで大好きな作品です。

 私が始めて尾道を訪れたのは2008年、それからも四国を訪れた際に立ち寄ったりで、何だかんだでトータル3回も訪れた事になる。
大体いつも映画の舞台になった所を訪れると作品に出てくる家や建物、カフェなどを訪れたくなるのだが、尾道に行った時は不思議とそんな事はなかった。
何故なら、もうこの尾道全部がまさに大林さん作品のセットみたいなものなのだから-敢て映画の世界に出てくるところを訪れなくとも、そこに居るだけで、そう、もう映画の中の世界に居るような気分に浸れるからである。

 特にあれやこれやと考えずにぶらぶらと街を歩くと-起伏が大きい街なのでぶらぶらと言う感じでもないのだが-記憶の片隅にある大林作品の世界とそこに居る自分がリンクして、何とも言えない幸福感を得る事ができる。

 私にとっての尾道はそんな町である。

 大林宣彦さん最後の作品となった「海辺の映画館―キネマの玉手箱」は当初の公開予定日は奇しくも大林さんが亡くなった4月10日であった。
残念ながら今、世間を賑わしている新型コロナウィルスの影響で上映は延期になってしまったが、この騒ぎが収まってから映画館で見たいと思う。

 そして、各映画館では是非、追悼上映という形でこれまでの素晴らしい作品を再度映画館で上映してもらいたいと思います。

 これまで沢山、すばらしい作品をありがとうございました。

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