鳥取の旅も3日目だ。
初日、2日目と色々動き回ってきたので、この日は地元の友達と合流し、のんびり梨狩りでもして過ごそう、という計画だったのだが、、。
前日にその友達から「梨狩りの他に見たいものとかない?」と連絡を貰い、「投入堂が遠くから見えるスポットがあるらしいけど、それを見るのはどうだろう?」と返信。 - 投入堂とは切り立った崖に櫓のように組まれたお堂の事で、これが中国地方のこの辺りにあるという薄っすらとした記憶はあったのだが、直ぐ近くにあると知ったのは、ここ三朝温泉に到着してからのこと。
友達から返信があり、「折角だから投入堂の近くまで登っちゃいましょうか」との事。調べてみると、登山道はかなり険しく、チェーンを伝って登る箇所などもあり、両手が空くようリュック推奨、そして軍手なんかもあった方がよいなんてサイトに記載がある。その旨、友達に返信すると、「リュックも軍手も貸しますよ!」と返信がきた。何故かかなり積極的だ。
更に調べると、登山口で靴のチェックがあり、スニーカーなんかだと断られる場合があり、その際、ワラ草履を購入させられる事になると書いてある。
- 昨年、伊豆大島に登山した際スニーカーだったのが、その時は3,4度はずるっと足を滑らせた記憶がある。ましてや、今回は切り立った崖なんかを登り、またずるりと滑るとなるとかなり危険なんじゃないか。。そしてワラ草履なんて、、と思いつつ友達に再度その旨伝えると、「昔はスニーカーでもオーケーでしたよー。もし、断られたら引き返すって事にしてとりあえず行っちゃいましょうか」とやはり何故か積極的で、結局はこの言葉に押されるようにひとまず登山口まで行ってみる事にした。
- 結果、登って大正解、という事であったのだが。
登山口受付の前に参拝受付があり、「投入堂まで行く予定ですか?」と聞かれ、「そのつもりです」と答えると、受付の住職がスニーカーの裏をチェックし、「それだと断られるかもしれませんね。。」とのこと。「とりあえず行ってみます」と言葉を残し、登山口受付まで歩いたのだが、この途中途中にある寺院がいずれも素晴らしかった。
因みに登山口手前にある本堂までの参拝の場合は400円、投入堂まで行くのであれば参拝の料金は1200円でした。
途中、寺院に幾つか立ち寄り、いよいよ三佛寺本堂に到着 - ここの裏側に登山参拝の為の受付がある。入山記録(2名以上でないと受け付けてくれない)を済ませ早速スニーカーのチェックを受ける。やはりNGだった。けど、ここまでやって来たし(そもそも既に投入堂までの参拝料も支払い済みだ)、という事でワラ草履を購入する事に。お値段900円で、最初、友達とスニーカーでも行けるだろうに、ワラ草履を売る為の策略だ、なんて冗談で言っていたのだが、結果、このワラ草履がとてもよかった。
ワラ草履なんて履いたのは初めてであったけど、これほどまで滑らないとは!と驚きであった。ワラ草履、侮るべからずである。
あと、こちらの受付で「六根清浄」と書かれたタスキのような輪袈裟(わげさ)を渡され、これを肩から掛けて歩く事になる。そう、ここはあくまで登山でなく修行の場なのである。
歩くとすぐ宿入橋(しくいりばし)があり、ここを渡りいよいよ入山となる。橋の下には清らかな水が流れている。
歩き始めて直ぐに険しい道というか、ほぼほぼ崖のような道 - しかし、一旦登り始めるとスイッチが入ったのか、難なくクリアー、出だし快調だ。
途中途中の景色も素晴らしい。遠くに見えるのは日本海であろうか。
くさり坂を上ると文殊堂があり、ここでしばし休憩。ここからの眺めも絶景であった。
今回一緒に登った友達は小さい頃に2回登った事があるらしいが、今回また登る事にしたのは、仮に世界遺産にでもなったりしたら、色々と規制が厳しくなったりし、登りにくくなったりするかもとの事であった。
あとはやはり有名になり過ぎると人が多くなったりするというのも理由の1つであり、なるほどそれでこんなにも登るのに積極的であったのかと妙に納得。
まぁ世界遺産になるかどうかは分からないけど、確かに行ける内に行くというのは理に適っていると思う。世界各国見渡しても昔は何の問題もなく行けたのに今は入国すら厳しくなっている国もあったりで、ここもこの先、入山に関してどうなるか分からない。そして、やはりこの時期、登山客もそれ程多くなく登りやすかった。確かに今の内に登っておいてよかったと思う。
地蔵堂を過ぎると鐘楼堂があり、ここで鐘を突いて世界の平和を願ってきた。それにしてもこんな険しい場所によくぞこんなに沢山のお堂を作ったもんだ。
ここから暫く行くとこれまでの切り立った崖とはおさらばし、少しばかりなだらかな道になる。馬の背中のような道があり、「ここは馬の背ですか?」なんて友達に冗談で言っていたところ、後で調べてみたら本当に馬ノ背という名前の道であった。何故、冗談になるかと言うと鳥取砂丘に馬の背という場所があるからだ。
受付で貰った地図を見ながら歩いていた訳ではなかったので、あとどれ位歩くかよく分からなかったが、どうやら投入堂に近づいていたようだ。
大きな岩の下にお堂がある。 - 観音堂という名前だ。ここいらの風景、以前訪れた国東(くにさき)半島で訪れた場所とよく似ている気がする。 神仏習合という共通点があるにしろ、何らかの繋がりを感じずにはいられない。
道は観音堂裏側の祠のような場所を抜けるようになっている。 - 祠の中は上から水が滴り落ちとてもひんやりとする。ワラ草履も水を含み少しばかり重く感じる。
そして、祠を抜けた先にある大きく突き出た岩を右手に曲がると、 - 不意に投入堂が現れた。
まさに不意に、という言葉がぴったりである。ここまで登ってきた達成感と相まり、何だかとても感動してしまった。
ここにやって来た人達、みな同じ気持ちでみなで感動を分かち合い、それぞれ記念撮影をしたりと思い思いの時間を過ごす事となった。
行きはよいよい帰りは何とやらで、下りもそれなりにしんどい。何と言ってもワラ草履は滑らなくてよいだが、足の親指と人差し指の間に当たる部分が慣れないせいもあり、少々痛く、下りになると更に食い込んでくるのである。
それでも行きよりもスイスイと下っていく。
往復2時間ばかり歩き、遠くに最初に渡った赤い宿入橋が見えてきた。どうやら修行道も終わり現世の生活の場への帰還ももうすぐのようである。
橋を渡り、最後の階段も上がり切ると最初に受付を済ませた参拝事務所に戻って来た。投入堂、近くまで登ってきたよかった。
最後受付に下山時刻を記帳し、借りていた輪袈裟を返却し修行も終了である。無事、下山出来てよかった。
今回の登山の友とでも言うべき、ワラ草履も最後までがんばってくれた。