- バゴー
ゴールデン・ロックの麓町、チャイティヨーから長距離バスに乗り、再びヤンゴンに戻って来た。
ヤンゴンのバスターミナルで市街地に戻るべくローカルバスを探してうろうろしていると、バンコクで出会い共に南ラオスを旅した○山さんとバッタリ(○山さんとのバンコクでの出会いはこちらに詳しい)再会した。
聞くとこれからバゴー(旧名ペグー)という町へ行くそうだ。隣には私も○山さんを通じてバンコクで知り合ったオベちゃんも一緒だ。今日は私はヤンゴンに1泊する予定であったのだが、旅は道連れ世は何とやら・・・という事で、2人と一緒にバゴーへ急遽行く事にした。因みにバゴーはヤンゴンから1時間半程の距離にあり、私が今来たチャイティヨーの近くにあるので、たった今通ってきたばかりの道を少し戻る事になる。
チケット売り場に行き、2人が乗る3時PM発のチケットがあるか聞くと残り2枚あるらしい。ラッキーだ。早速買い求めバスに乗り込む。
- ミャンマーでは日本の中古車が走っている光景をよく見掛けるのだが、乗り込んだ我々のバスも名古屋市内を走っていた路線バスのようである。車内にあちこち”名古屋”と書かれた日本語の文字が目に付く。そして2つ売れ残っていた席は「非常口」の席であった。つまり、ここの席は窓を開ける事ができない。冷房なんて勿論効いてないし、暑さを凌ぐ為にみな窓を開けているのだが、私の席だけは窓を開ける事ができず、灼熱の中バゴーまでの1時間半の道のり、暑さに耐えながらの移動となった。
バゴーに到着後、2人は予め宿を決めていたようで私も2人に付いて行く事にした。宿へと歩いている途中、サイカーと呼ばれるミャンマーの自転車サイドカータクシーの男性が「バゴー観光はどうですか」なんて話しかけてきた。所謂、どこの町にでも居る客引きである。私はこの手の客引きはあまり相手にせずこれまで極力自分で歩いたり地元のバスを使って観光していたので、今回も同じように相手にしていなかったのだが、オベちゃんは私と逆のタイプで、面白がって客引きの彼と色々話し始めた。おまけに彼が昔ルパンの声優をやっていた山田康夫氏に似ているという事で、勝手に「山田さん、山田さん」なんて呼んだりしている。
聞くと1日掛けてバゴーの名所・旧跡などを巡り100ドル程とのこと。3人で割ると1人頭30ドルちょっとの値段である。ちょっと高いかなとも思ったが、オベちゃんは割りと乗り気であり、私も普段そんな形で観光した事もないし、そもそもこの町に来たのも2人のお陰だ、という事もあり交渉はまとまり翌日10時頃、同じ場所で会う約束をして山田さんと別れた。
翌日、山田さん(本名はトントンさん)はまず我々をカカットワイン寺院と呼ばれる修行僧寺院に連れて行ってくれた。ここで普段修行している僧侶達の昼食風景を見られるとの事であった。
ミャンマー特有のエビ茶色の袈裟を来た僧侶が列をなし昼食を受け取り、だたっ広い院内で食事をする風景、確かに自分で普通に観光していると見逃してしまうような光景かもしれない。なかなか見応えある風景でもあった。
それにしても山田さんはとっても細身である。幾ら仕事とは言えそんな山田さんが我々3人を乗せ(そもそもどうやって3人も乗っていたのだろうか)、頑張って自転車を漕いでくれるのには何だかとても申し訳ない気がしないでもない。
お次はバゴーのマーケットへ。どこの町でもそうであるがマーケットをうろつくのは楽しい。路上のカゴに並べられた様々な野菜、そしてニンニクやら玉ねぎの計り売り、何やらどぎつい赤い色をしたデザート?、そしてアイドルや女優のポスターなど様々なもの - ミャンマー人の暮らしをここで垣間見ることができた。
マーケットで我々も昼食を食べた後、山田さんはお次はタバコ工場へと我々を連れて行ってくれた。
ここで働いていたのは驚いた事に全員女性であった。年齢層は様々で、子連れのちょっと年配の方からかなり若そうな女学生風の女性達など様々の年齢の方々が働いているようだ。
この時期、「旅の指差し会話帳」という本が発売されたばかりの頃で、オベちゃんはこれを持っておりここではこれがかなり活躍した。「指差し会話帳」というものは、様々なシチュエーションで使える日常会話などのイラストが描かれそこにミャンマー語も添えられ、カタカタのルビ通りに発音もできるし、発音が無理であれば1つ1つを指差して、お互いに会話を可能にする本である(そのシチュエーションのイラスト探すのに多少時間が掛かる時もあるが、なかなか面白いものである)。
オベちゃんはここぞとばかりに皆の前に立ち、イラストを指差す訳でなく、実際に声に出してみんなに質問したりしている。カタカナ読みでも意外と通じるようである。
ある程度会話らしきものが進むと、オベちゃんがおもむろにそこで働く女性達に「恋人はいますか?」なんて聞いたりしている。奥ゆかしいミャンマーの女性達はそれだけできゃっきゃ言いながら爆笑している。逆にオベちゃんが「恋人はいますか?」なんて聞かれると、ここぞとばかりに、ダッと足をがに股に開き、額の所に手を当てキョロキョロするような仕草で、「私は今恋人を探しています」なんて本に書いてある通りにミャンマー語を読み上げると、みなの間で爆笑が起こり、きゃっきゃきゃっきゃという声が工場内に響き渡った。 - 何だかとっても馬鹿らしいと言えば馬鹿らしいとも言えるのだが、静かな楽しき午後のひとときであった。
オベちゃん、実にエンターテイナーである。こうして異国の人達と生の声で会話し楽しめるなんて、とっても素敵な事だと思う。
そんな楽しきタバコ工場を後にし、お次は名もなき寺院へ。外で子供達が遊んでいたり、院内では静かに読書に勤しむ青年がいたり。
午後になるとさすがに日も高くなり、めちゃくちゃ暑くなってきた。そんな訳で、一旦山田さんの家で休憩する事になった。近所の子供達がわーっと集まってはしゃいだり、我々をからかったり、写真を撮ってくれとせがんだり。何処の国でも子供達はかわいいものである。そして、山田さんは何と我々の為に日本のビデオを途中でレンタルまでしてくれ、午後の暑い時間帯は家でゆっくりと寛がさせてくれた。
山田さん宅で休憩後、再び観光へ
- 近くでロンジー(ミャンマー人の民族衣装・巻きスカート)を作っているところがあるのでそこを見学。ここは先ほどのタバコ工場とは違い1人、少年が黙々とロンジーを作っていた。そして、その近くには日本人墓地があり静かに手を合わせてきました。
バゴー巡りの観光もいよいよ後半へ - 巨大な寝釈迦があるシュエターリャウンへ。色白のとっても柔和な顔をした涅槃釈迦だ。と、ここで先ほどタバコ工場で出会った女学生2人組みとバッタリ出会った。どうやら仕事が終わって、ここにお参りに来ているようだ。仕事の後、寺院へ、敬虔深いミャンマー人の生活というものはやはり仏教に根ざしているのだなぁ、しかもこんなに若いのに、と妙に感心してしまった。
先ほどオベちゃんのお陰ですっかり打ち解けていたのでここでの再会は何だかとっても嬉しかった。
最後もやはりパゴダ - チャイブーンパゴダ - へ
東西南北と四方を向く四体の仏坐像、ミャンマーには本当、様々なタイプの仏像があり、寺院巡りは飽きる事がない。どちらの方角を向いている仏像かはちょっと分からなかったが一体は修復中であった。
日も傾き始めここいらで、本日のバゴー観光は終了。町の中心にある黄金色に輝くシュエモードパゴダまで山田さんに送ってもらいここでお別れ。
- 前述したようにこのような客引きのガイドは普段なら絶対に断る私であったので、こんな形で町を巡るのは初めてで会ったけど、結論から言うととってもよかった。それはひとえに山田さんの人柄にもよるものでもあったと思うのだけれど、現地のガイドに連れられての観光ってこんな感じなんだ、という新しき発見でもあった。そしてここバゴーでの思い出は間違いなく山田さんと共にある。あと、タバコ工場で出会ったみなさん、とても楽しかった。
- バンコクで出会い、共に南ラオス、そしてミャンマーのバゴーも旅した○山さんとは翌日別れた。○山さんはオベちゃんと共にゴールデン・ロックへ。そしてこれを最後に2人とは結局その後再会する事はなかった。
山田さんことサイカー運転手のトントンさんにも大変お世話になったし楽しかった。あれからもう18年も経ってしまったけど、山田さん、お元気ですか?そして今も元気にサイカー漕いでいますか?