弘前から青森へはローカル列車を利用した。駅に到着し改札を確認するとICカードが使えそうなので、発車時刻ぎりぎりまで駅中のお土産屋でりんごの発泡酒こと、シードルを買おうかどうしようか悩み(結局500mlのハード系のを1本入手)、さぁ改札をくぐろうと思ったら、ICカードを当てるところに「×」マークがありカードは使えず、、。
慌てて切符を購入しようとするも券売機には人が何人か並んでおり、「こんな事なら改札を確認した時にしっかり確認しておけば良かった。。」と後悔しつつも、無事順番が回ってきて切符を購入し、改札を抜けてダッシュ。
ホームに止まっていた電車に飛び乗りどうにかぎりぎり間に合った。
列車は横並びのシート。ローカル線なので1つ1つ駅に停車していく。ドアが開く度に外から冷たい空気が流れ込み、私の目の前の女性のスカートを風が揺らす。ホームの向こうには津軽平野と岩木山が広がり、何だかとっても東北だなぁと思わせてくれる光景が車内にも、そして車窓にも広がっていた。
電車は30分程で青森駅に到着。青森市内も4年半ぶりだ。
それにしてもこの日はとても寒い1日だった。後で聞いた話によるとこの日は小樽では雪も降ったと言う。
予約しておいた駅前の宿にとりあえず荷物を預け、お昼時でもあったので、宿の人に「何かいいお店はないか」と聞いたところ、”のっけ丼”のお店、というか市場を教えてくれた。のっけ丼とは、どんぶりご飯片手に、市場内にある色んなお店を回り(30店舗程あるらしい)、魚の切れ身などを購入して、自分なりのどんぶりを作っていくというものだ。因みに教えてもらったこちらのお店、何と4年半前にも青森が地元の友達が連れて行ってくれたお店で、偶然と言うか、地元の人はやはり美味しいお店を知っているものである。
市場の入り口で先ず、のっけ丼を作る為のチケット購入する。1枚150円だ。
チケットは10枚セット(1,500円)か5枚セット(750円)で販売しており、追加で1枚からでも購入する事ができる。ご飯が普通盛りでチケット1枚(大盛りだと2枚)、中トロ2切れで1枚、大トロは1切れで1枚と言った具合だ。そんな訳で意外と直ぐにチケットは手元からするすると無くなっていくもので、私は5枚+2枚、つまりは1,050円分購入し、自分なりののっけ丼作りました。感覚的にチケット10枚だと多すぎるし、5枚だと少なすぎるしという感じ。
味も美味で自分なりに色々工夫できるので楽しい。近所にあったら毎週通いたい位である。
そんなこんなで今回の青森旅はのっけからのっけ丼での始まりとなった。
のっけ丼の後、しばらく海沿いの道をぶらつく。ここは前回も訪れた場所だ。
海沿いに大きなシードル工場があり(記憶ではこの建物のようなものがあったような無かったような。。)ここにはレストランやカフェも併設されており、しかもここには私が弘前駅で出発ぎりぎりまで購入を悩んだシードルと全く同じもの販売されていた(こんな事ならここでゆっくりと選んで購入しても良かった!)。
りんごの特産は弘前、と思っていたが、工場と言うか販売所は大々的に青森市、のようでもある。
海沿いには、”ねぶたの家 ワ・ラッセ”があったりと青森を歩いているとやはりこの地はねぶたと共にあるなぁとつくづく思う。
秋田でも感じた事ですが、このような夏のお祭りに関する建物や看板、キャラクターなどを各所で見るにつけ寒い北の土地で暮らす人々が暑い夏のお祭りを心の拠り所として生活している - 地域文化として、その土地土地に深く根付いている - そんな風にも思えてきたりするものである(まぁ完全なる私見ですが)。
ブログのタイトルにもなっている美術館になかなか辿り着きませんが - そろそろ美術館へ行こうと駅に戻り一応バスの乗り場を確認すべく案内所に入ると、窓口には「本日は県立美術館は臨時休館中です」の文字が。。
一瞬思考が停止してしまったが、改めて窓口の人に聞くと、(まぁ書いてある通りなので当たり前だが)「本日は臨時休館です」と言う答えが。
どうやら、この日の美術館、トイレの1部で水が出なくなった為、館内全てを点検する為に休館にしたようだ。よりによってこんなタイミングで!しかも、私は今回は日程的に青森市は1泊の予定であり、翌日の朝には函館へ、の予定である。
とは言え、無い袖は振れないとでも言うかどうしようもない。そんな事より今日1日の予定がぽっかりと空いてしまった。棟方志功記念館に行くと言う手もあるが、ここは前回訪れている。仕方がないので町中をふらっと歩いてみようと思い、2,3ブロック歩いてみたが寒すぎてぶらぶら出来そうもなく諦めた。
やる事も特になくなったので、駅に隣接されているビルの本屋に入り、気になった本を2冊程購入した。
それらの本に店員さんがブックカバーを付けてくれる。と、これはまぁ本屋では普通の事ではあるが、それよりも気になったのはブックカバーのデザイン - どうも太宰の言葉っぽい。
調べてみると果たしてやはり太宰の「津軽」の1節であった。青森で購入した本のブックカバーに太宰の言葉 - なかなか粋である。
そして結局、この日も1日、コーヒーと読書で過ごす事となった。
青森県立美術館は前回も訪れていたので、今回はまぁいいかな、と最初は諦めていたのだが、今の時期マルク・シャガールのバレエ「アレコ」が4点揃っている。全4点でコンプリートのこの作品、青森県立美術館は3点のみ所有し、残り1点はアメリカのフィラデルフィア美術館にあるという。その残り1点が現在アメリカから借用中で、今ならコンプリートで観る事ができる。
前回、3点だけでも圧巻だったこの作品、コンプリートで観たい気もする。しかし、美術館自体前回訪れているし、まぁいいかと思う気持ちもあったりで、思案するがなかなか結論が出ない。
翌朝は10時発で函館まで行く予定である。しかも今回のルートは船旅である。そう、青森から函館まで津軽海峡を渡って行ってみたいと前々から思っていた。
他の便を調べると14時発のもある。しかし、到着が18時なので、函館観光分が丸1日潰れてしまうことになる。長い事思案したが結論が出ず、ひとまずフェリー会社に電話すると、14時の便はまだ席も空いてて変更も無料で出来るという。となると、電話で話している流れで、「それじゃ、」と変更してしまった。案ずるより産むが易し、かもしれない。
そんな訳で翌朝、快晴!の青森駅からバスに揺られ青森県立美術館へと向かった。美術館はありがたい事に、朝9時半からオープンである。
バレエ「アレコ」はやはり素晴らしかった。 - 美術館地下2階に広がる縦・横21m、高さ19mの四層吹き抜け大空間の壁4面に飾られている「アレコ」 - これは元々ロシアのプーシキンの詩「ジプシー」を原作とする物語が原作だ。
この物語を軸としたバレエ公演の舞台背景の為にシャガールによって描かれた巨大背景画(大体の大きさが高さ約8m、横15m程だ)、そして今回は日に3度上映されると言う「アレコ」に舞台照明を当て音楽と共にバレエのステージを再現させると言う15分プログラムも見る事ができた。
館内でチケットを購入し、エレベーターで地下2階に下り、真っ直ぐ進んでいくと先ずこのアレコホールがある。
前回はそんな作品があるとも知らずに1歩足を踏み入れてすっかり魅了されてしまったこの空間。今回はそこにもう1点加わり、コンプリートとなっている。前回とは全く違った雰囲気を感じさせてくれた。ずっとずっとこの空間に居たいと思わせてくれる空間で、1つ1つ丁寧に見て回った。上映プログラムを鑑賞した時間と合わせると結局1時間もこの空間に居てしまった。しかし、それ程、心地のよい空間でもあった。
今回色々と思案した挙句訪れてよかった。
美術館を訪れる前日の夜、昼間の寒さに比べると少しばかり寒さが和らいだ。食事の後に少し町をぶらつき、(お昼とはちょっと場所が離れた)海岸沿いを散歩してきた。夏のねぶたの時期にねぶたの置き場になっていた記憶がある場所だ。
海沿いの公園は寒さの為か、殆ど人が居らず、スケボー少年が2,3人居るほどだった。
春先の海沿いの遊歩道はちょっとばかり寂しくもあったが、陸奥湾に沈む夕日はやっぱり美しく、あぁ、あの夏の頃は友達数名と一緒に青森をあちらこちら回っていたなぁなんて事が思い出された。写真を数枚撮ったがやはり海沿いの場所は寒くもあり、そんな感傷に浸る間もなく早々に退散する事とした。
さて、明日は東北を離れ、函館である。