皮トンビとの邂逅 - 鴻池朋子展 ちゅうがえり

 ブリジストン美術館改め、この度新しく生まれ変わったアーティゾン美術館まで行ってきた。

 折角、普段ブリジストンの自転車に乗っているので、愛車のマークローザで乗り付けたいところでもあったのだが、さすがにこの炎天下と距離的な事も考えて電車を使って行くことにした。
 
 うちの近所でやっていた展覧会にはコロナ禍以降2,3度出掛けていたけど、電車でちょっと遠出しての美術館へのお出かけは久しぶり。ちょっとづつ行動範囲も広げて行けたらいいなと思う反面、まだまだ色々と用心したりと早く昔のように気兼ねなく出かけられる日常に戻ってもらいたい。

 今回のお目当ては、鴻池朋子さんの展示「ちゅうがえり」

 ここでちょっと昨年のお話
  - 昨年開催された瀬戸内国際芸術祭2019で大島を訪れた際に出会った鴻池朋子さんの作品 - 会場となった大島は国立のハンセン病療養施設がある場所で、普段は立ち入る事が出来ないのだけれど、数年前から芸術祭の期間中のみ訪れる事が可能になったという、言わば、そう、アートによってちょっとづづ開かれつつある島である。

 そこでの鴻池さんの島の北側に広がる作品 - 「リングワンデルング」 - リングワンデルングとは、登山用語で悪天候で方向を見失って、無意識に円を描くように歩くこと。-長く閉ざされて戦前に入所者たちが切り開いた全長約1.5kmの遊歩道を復活させた作品で、20分ほどのトレッキングコースを巡る作品でした。

 道々にはその道の成り立ちや、実際に島で暮らしたハンセン病患者の方々の言葉が看板として立てかけてあり、それらや瀬戸内の島々を遠くに眺めながら歩を進めて行くというコースであった。
 - そして、暫く歩くと忽然と姿を現した皮トンビ - その時、目の前に現れたものは巨大な蛾のような、羽を広げた鳥のような、兎に角その存在感にただただ圧倒されたのを覚えている。
 
 その時の心情を以下のようにBlogに書き記していた。


 - 「この時は他に人も居なくとても静かな空間。作品、そして背後からは瀬戸内の波の音、足元からは虫たちの鳴声、そして時折聞こえる鳥の羽ばたく音で、全ての世界が1つに調和して広がっていきました。」 


 そして、その時の皮トンビが今回ここ、アーティゾン美術館に展示されていました。

 鴻池さんの言葉を借りると「自然と完全に絶縁され」という事になり、まさに目の前の皮トンビは、ここでは自然と完全に絶縁されてしまったな、という事を頭でもって、身体でもって感じられた  - ここで再度この作品を見られた事もそうだけど、あの時、大島でこの作品に出会えててよかった。
 
 因みに大島での展示の様子のBlogはこちら

 作品は他にインスタレーション、影絵(ブリジストン美術館らしく自転車の車輪を使った影絵は秀逸でした)、彫刻作品など様々あり、どれもとても良かった。鴻池さんの世界観はやはり私はとても好きである。

 中でも民話を形にした作品 - 「物語るテーブルランナー」プロジェクト - 鴻池さんが行く先々で出会った人々に幼少の頃の個人的なありふれたというか、日常的な話を聞いて、それを手芸で縫い上げて作品にするというプロジェクト、これが実によかったです。

 手芸作品の前には下絵とそれぞれのお話も書いてあって、100近く作品があったのだが、8割くらいは読みました。が、さすがに途中疲れてしまい読破出来ず。
 秋田や果てはフィンランドで暮らす人達が語った幼少の頃の何気ないお話、そして大島で暮らした人々の島でのお話など、作品ももちろん良かったですし、話もとても面白かった。

 これだけで1冊の本にしてもらいたいくらいです!

 展示は2020年10月25日(日)まで。

 新しくなったアーティゾン美術館も素敵な空間でした。(休憩スペースの距離を取る様に引かれたテープが洒落てました。)
 
 ぜひ!

 そして暑い夏はまだまだ続いているようです。

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