秋の訪れを感じる事もなくいきなり冬になった感がしないでもない今シーズンだが、最近暖かさの戻りがあるせいか、季節は逆行するかのようにすっかり秋めいている気もする。
見上げる空も澄んでいて、どこか秋らしさを感じさせてくれる。
と、いきなり空の写真から始った訳だけど、この度「大田区立龍子記念館」に行って来た。今回の展示は山下祐二さんのキュレーションによる企画「川端龍子 VS 高橋龍太郎コレクション」と銘打ち、コレクターの高橋龍太郎氏が所蔵している現代作家さん4名の作品たちと川端龍子氏の作品の対比というか、テーマを合わせて並べて展示するというもの。現代作家代表は会田誠さん、鴻池朋子さん、天明屋尚さん、山口晃さんの4名で、今をときめく4名というのもあるけど、見る側としては4名位で丁度いい量でもあったし、川端龍子さんの作品との対比というか会話というか、実に面白い展示だった。
この「大田区立龍子記念館」 - 存在はずっと知っていたのだがなかなか足を運ぶ機会がなかったので今回まさにいい機会とばかりに出掛けてきた。
場所はJR大森駅からバスでのアクセスとなっているのだが、うちからだと自転車でも行ける距離だ。最近遠出もしていなかったので、運動がてら大森方面へ出発。うちからだと30分ほどで到着 - 閑静な住宅街の中に佇むとても素敵な美術館だ。それにしても大森駅近くのこの辺りは全くの未知の領域だったので、自転車で走っていても何だか楽しかった。
美術館に足を踏み入れると、ススキが戦(そよ)ぎ、やはりもうすっかり季節は秋なのだなぁと改めて感じさせてくれた。
東京オリンピック/パラリンピックのポスターも手掛けていた山口晃さんの精密に描かれた<五武人図>や新しい形の観音像・天明屋尚さんの<ネオ千手観音>などなど素晴らしかったが、やはりわたくし的には最近すっかりファンの鴻池朋子さんの<ラ・プリマヴェーラ>がよかった。
昔の作品なのか、近年のとはまた違った感じで実際に目にすると色彩の美しさや細部に渡る描画の細かさなど際立っておりとてもよい作品だった。しかし、こんなにいい作品を沢山所有している高橋龍太郎さん、ただものではないなぁ。
会田誠さんの<紐育空爆之図(戦争画RETURNS)>、現代作家さんの作品の中ではこの作品のみ撮影可能だったのでこちらだけ撮影してきました。なかなか迫力ある1枚。色々私がここで書くよりも実際に見て感じたが早いと思うので、(写真ですが)ぜひ色々と感じ取ってみてください。
美術館の向かい、通りを挟んだところに実際に川端龍子氏が暮らした家やアトリエがありこちらも見学できるようになっている。ふらっと立ち寄ってのんびりと散策しようかと思っていたが、コロナ禍の今、入場が10時、11時、14時の時間制になっており、美術館の駐車場に集合し、みなでまとまっての見学となっているようだ。
幸い、時間的に丁度14時の時間帯に参加できそうだ。が、平日だと言うのに人が割りと多い。ぞろぞろとみなで入り口の門をくぐり今は龍子公園と呼ばれている園内へ入っていく。
入ってく直ぐに「爆弾散華の池」がある。ここには元々龍子の居宅があったのだが1945年8月13日に爆撃を受け居宅は倒壊 - その体験から龍子は<爆弾散華>という作品を描くのだが、その後、この場所に池を造成し、今では「爆弾散華の池」と呼ばれている。
この池を先ずは見学し、その後、園内を巡ったのだが、いかんせん人が多いので、池の隣の旧宅辺りでやり過ごしていると人がだいぶ少なくなってきた。滞在時間は30分可能なのだが15分もすると皆外に出始める。なので、ゆっくり回りたい場合は、旧宅辺りで時間を潰し15分位経った位から園内を巡るのが良さそうだ。
アトリエと旧宅の間にはちょっとした庭園が広がっていて、ここの散策が実によかった。紅葉にはまだ早いが昨年訪れた京都・大原の宝泉院にある庭を巡っているような気分でもあった。
当初の目論みでは縁側にでも腰掛けてのんびりしたいなと勝手に思っていたのだが、旧宅もアトリエも完全にドアやら窓は閉ざされていたので、そんな風に過ごす事はできなかった。しかし、庭を巡るだけでもいい時間を過ごす事ができた。あと、園内には案内をしてくれた方が2人ほど居たのだが、話が面白く丁寧に色々と説明してくれてこれもまたよかった。
帰りは大森駅まで行き、カフェにてコーヒー片手に読書。すっかり日も暮れ始め多摩川に戻った頃は空も赤く染まり綺麗な夕焼け、そんな1日であった。