羽田空港第2ターミナルの搭乗ゲート内を延々と歩き、1番端から日本の北の端、稚内行きの便は出発した。
今回の旅のお供は河﨑秋子さんの「清浄島」 - 礼文島を舞台にした小説だ。あまりにもどんぴしゃ過ぎてどうかとも思いもしたが、この選択はなかなか良かった。礼文島の1番南の集落 - 香深で読みながら本の中で主人公から北の集落から「香深」へ行くなんてシーンは、「お、今からこの辺りに来るのか」なんて想像するだけでも楽しめた。
因みにこの「香深」という地名、「かぶか」とずっと思っていたところ「かふか」でした。「かふか」なんてこれまたちょっぴり文学漂うネーミングで、いい町の名前だなぁと今更ながらに思った。
そんな訳で飛行機は10時40分羽田空港を離陸し13時頃に稚内空港に到着。到着後直ぐに港へと移動し、14時50分の船でいざ礼文島へ - そこから約2時間船に揺られ、17時ちょっと前に霧に覆われた香深港へ到着(稚内を出た時はあんなに晴れていたのに!)。
自宅を出てからその日の内に礼文島に着く事は出来たが、丸1日費やしてしまいこの日は結局移動だけで終わってしまった。
2日目。朝早くに起床し、宿の回りを散策。宿は港から歩いて5分ほどの所にあり、港周辺を歩いてみたけれど、お店も少なくひっそりとしている印象。果ての島に来たのだなぁという印象もあるが、やはりどこかしら随所に北海道らしさの雄大さを感じさせ、当たり前だけど沖縄の島々とは違うなぁと思わせてくれた。
さて、昨日民宿の玄関に入ってまず目に飛び込んできたのは、下駄箱に泥で汚れたトレッキングシューズの数々・・。そして、宿で会う人の格好がみな登山スタイルだという事だ。正直私は今回、礼文島に来た目的は登山やトレッキングという訳でなく、稚内にも行ってみたかったというのもあり、その近くにある島々も折角なら巡ってみよう、という位のものであった。まぁ礼文島自体は昔から何故か心惹かれるものがあり、何故か利尻島より礼文島に行ってみたい、という想いが何故かあったってのはあるのですが。
なので、宿で夕食時に一緒になった方に「礼文島に来た目的は何ですか」的な事を聞かれると答えに少々窮したものだ。とは言え、当然ながら宿に居た方々全員がみなトレッキング目的という訳でもなく、定年後に北海道をツーリングで回っている人や、最近仕事を辞め、車で北海道を回っている途中に礼文島に立ち寄った、という方々も居た。
今回は美術館や芸術祭巡りなど特にどこか行きたかったところがある訳でなく、島に来る事自体が目的だった訳で、何の下調べもせずに取り敢えずやって来た。なので、事前に何も全く調べていない =(イコール)島の風景写真など一切事前に知る事なく旅をする事になり、そのお陰か、この日随所随所で出会った風景に何度も圧倒される事となった。
ひとまず、宿でレンタカーを借り、宿の人に教えてもらったお勧めルート7箇所を車で巡る事にした。
ツーリングで巡っている人が言っていたのだが、島の北側に行くと何故か晴れてくるという言葉通り、暫く走ると太陽が顔を覗かせ、すっかり夏の空模様になった。不思議なものである。
先ずは目指すは島の1番右上 - 金田ノ岬だ。因みに宿のある南の集落 - 香深からはここまで車で約30分、と言ったところであろうか。島の北端まで来たらまた曇ってきた、というよりも霧深くなってきた。
ここはアザラシがやって来るところでも有名らしく、アザラシも発見!しかし、波間に浮かんだり海から顔を出している姿を想像していたのだが、岩の上で日向ぼっこをしており、あれは岩?という感じで岩なのかアザラシなのかあまり見分けがあまりつかないほどだった。。
この後は島の1番左上にあるスコトン岬を目指す - 礼文島最北端の地だ。ここら辺からトレッキングルートもあるらしく、昨夜宿で一緒になった人達がみな「スコトン、スコトン」とよく言っていたのだけど、最初何の事を話しているのか分からなかった。話の流れでどうやら最北端の地という事が分かった次第で本当に今回は何も調べてなかった。
そして、この地名、アイヌの言葉のサク・コタン(夏の・集落)から来ているものらしく、なかなかいいネーミングである。
晴れた日には遠くサハリンも見渡せるらしいのだが、霧に煙ってこの日は発見できず、そう言えば5月に訪れた沖縄本島最北端の辺戸岬に行った時も鉛色の空で、最近は北限の地で天気に恵まれない事が多いような気がする。
ここから今度は少々南下し、島の西側にある澄海岬(すかいみさき)へ - 礼文島にはぐるっと1周出来る周遊道路がなく、車が走れる道は主に島の東側、そして西側は1部しかない訳であるが、島の西側は切り立った断崖絶壁の風景になっており、トレッキングコースでは西側の方を歩けるルートがあり、またいつか歩いてこの辺りを散策してみるのもいいかもしれない。
西側は特に信じられない位の雄大なそして幻想的な風景が広がっており、ここ 澄海岬も霧のせいもあってか、太古の昔を思わせる幻想的な風景が広がり、その姿に「あっ」と息をのんだ。
ここから島の北部にある久種湖畔を少々散策し、北部の見どころは一旦終了し、再び南下することに。暫く走るとまた天気が良くなってきて、香深近くになってくるとまた霧が出てくるというおかしな天気だ。
島の南部 - 香深町の近くに島を横断できるトンネルがあり、ここから西側に出る事ができる。西側に出るとやはり雰囲気ががらりと変わり、幻想的な風景が広がっている。横断トンネルを抜けそこから右側に折れ、暫く走ると「ダイニングカフェ・海」に辿り着いた。ここは宿で一緒になったツーリングで回っている人がお勧めしてくれたお店で - とは言え、この辺りはここ位しか食事処がないのであるが - 島の北部で食事を済ますとか、やって来たこの辺にあるのか?と心配する事なく、ここを目指して来る事が出来たので教えてくれたライダーさんに感謝!である。
遠く地蔵岩を眺めながら、海にせり出したテラスでスープカレーを頂く。ここのスープカレーは絶品でした。朝から忙しく色々と回っていたので、ここで暫くのんびりし、絶景に囲まれてコーヒー片手に読書なんかも楽しんで来ました。
ここに来るまで車で結構巡ったし、色々見て満足しつつもあったので、このままレンタカー返却の時間までこのカフェで飲んで過ごそうかとも思ったが、もう1つの西側のお勧め「桃台猫台」に行って見ることにした。このカフェから車で10分弱のところである。
しかし、ここは行って大正解であった。
ここも霧に覆われた大地が実に幻想的で中国の山深く、いや、やはりこの景色はどこか日本的というか、北海道的とでも言おうか、いや、今まで私が見たことがない様な風景が広がっており、すっかり心奪われてしまった。
この辺りからのトレッキングコースもあるようなので、次回はここいら辺りを歩くと更に凄い景色に出会えるかもしれない。
最後は香深エリアまで戻ってきて、島の南側「北のカナリアパーク」へ - ここは映画「北のカナリアたち」の舞台にもなったところであるが、残念ながら映画を観ていない。。そしてもし晴れていれば遠くに利尻富士を望めるという大絶景なのだが、ここからもやはり霧に煙り利尻富士は見えず。
明日の利尻行きの船の上からは利尻富士は見えるだろうか。
それにしても車で回っても見どころ満載だった礼文島。すっかり気に入ってしまい、ここはまたいつか訪れたい。次回はトレッキングもして、そしてこの地からぜひ利尻富士を拝んでみたいものである。