台湾北の港町、基隆への旅

 金門島から台北に戻り、6年振りの台北という事もあり、折角なので2泊することにした。とは言え今回の旅のメインは金門島という事もあり、台北に戻ってきてからの疲れ具合なんかも加味してから何処に行くか決めようと思い、何も決めていなかった。

 台北から簡単に行けそうで且つ、そう遠くない北の港町、基隆へ今回は行ってみる事にした。台北バスターミナルから直行の高速バスが出ており、予約なしで乗る事もできてアクセスがよい上に40分ほどで到着と軽い日帰り旅行にはもってこいの場所のように思えた。

 台北を出た頃から曇り空だったけど、基隆に到着した時に小雨模様に。台風がちょっとばかし近づいているってのもあるだろうけど、台湾の北部は比較的いつも天気が悪い気がする。

 基隆のバスターミナルでバスを降りると目の前にボードウォークの広場が広がっていたりと、これまでの他の台湾の街と比べるとどーんと抜けが良いというか、細かい路地があまりなく、広々とした印象だ。

 バスターミナル内に観光案内所があり、ひとまず街中マップだけ貰おうと思い、カウンターにずらっと並んだマップを物色していると、中から中国語で声を掛けられた。相変わらずいつものように私が「中国語は分からないんですよ、、日本人です」と答えると、カウンター内のスタッフが1人のお姉さんを指差して「English,English」と言ってくれ(どうやら彼女は英語を話せる、という事らしく)、そのお姉さんが英語で対応してくれた。台湾の人はいつでも親切である。

 取り敢えず私はノープランで来た事を伝えると、目の前にどばっと地図を広げ、親切に色々といわゆる「観るべきところ」を教えてくれ、私はその情報を元に街歩きを開始する事とした。

 まずは最近出来たという基隆塔に行ってみることに。初め、入り口が分からず間違って裏口の方に行ってしまったら、掃除をしていたおばさんが親切に入り口は反対方向だ、という事を教えてくれた。

 ちょっと横道に逸れると遥か上空に聳えるタワーを発見。入り口も無事見つかった。どうやら5Fエレベーターで一気に上がり、そこからの眺望を楽しむ施設のようだ。

 エレベーターを降りると目の前には港町らしい景色が広がっていた。何処となく私の故郷の長崎の景色によく似ている。小雨模様なのがちょっと残念だったけど、それなりに楽しめた。

 タワーの4Fはどういう訳だか本屋になっており、施設内の本は販売もしているのだが、自由に好きなところに座って読んでいいようだ。

 当然ながら置いてあるのは中国語の本ばかりだったので私は日本から持参した本をここで暫し読みつつ休憩。館内のあちらこちらに趣向を凝らしたイスやクッションが置いてあり、のんびりするには持ってこいのところだ。

 その後、このタワー近くで昼食に排骨飯を食べたが、なかなかの美味しさであった。

 一旦街中に戻り、そこからローカルバスに乗って、正濱漁港彩色屋と呼ばれるエリアへ ー バスで30〜40分ほどで到着。

 ここも最初に観光案内所のお姉さんが教えてくれたところで、一通り説明してくれ、私が立ち去ろうとしていた時に「あ、ここも是非行ったがいいですよ」と別のマップを取り出して教えてくれたところで、ぎりぎりに教えて貰えてよかった。

 色とりどりのリノベーションされたハウスが立ち並び、バス停も何だかおしゃれだった。リノベーションされたハウスにはそれぞれカフェやギャラリーが入っており、昔の建物をいい感じにリノベーションして再利用するセンスはさすが台湾である。台湾ではこういう古いものを生かしていくのを「文創」と言うのだが、再開発が激しい昨今の日本もこういったところはちょっと見習ってもらいたい気もしないでもない。

 カラーハウスの前をぶらっと歩いていたら中国茶を出しているお店があったのでそこに入ることにした。店名は「小島走走」 ー 1Fがカフェエリアで2Fはギャラリーにもなっており、台湾の作家さんの作品も楽しむ事ができた。

 店内は一席だけ丁度空いていたのだが、暫くすると、真ん中辺りのテーブルに座っていたお客さんが帰りそこが空いたのだが、すかさず店員さんが私の元にやってきて、iPhoneの画面を示し、何やら中文から英語に翻訳された文字が書いてある ー 「I’ll help to make you comfortable to move to the middle table.」 ー 要は、「真ん中のもう少しだけ広い席が空いたのでそちらに移りませんか」という事だった。
 

 店員さんからしてみれば、席を移るとなるとテーブル拭いたりと余計な手間にもなったりすると思うのだが、しかもわざわざ翻訳サイトで英語にして伝えてくれるってのは、嬉しいというかちょっとした感動を覚えた。台湾を旅しているとこのように店員さんが、私が中国語を話せなくても面倒くさがらずにどうにかコミュニケーションを取ってくれようとしてくれる事が多々あり、嬉しい限りである。

 基隆は当初はちょっとだけ見て、台北にすぐに戻ろうかな位に考えていたのだが、このカフェが居心地がよくまた、読書が進み結局お店を出る頃にはすっかり陽も落ち始めていた。

 折角なので、基隆には大きな廟口夜市と呼ばれる夜市があるらしいのでそこに行ってみることに。この夜市は街の中心地にあり ー 基隆の街は比較的バスターミナルから歩いていける範囲にあるので街歩きしやすいところである。

 それにしても週末と重なっているせいか、夜市はすごい人手だ。写真を撮影していると同じく大きなカメラで撮影していた台湾人の男の子に話し掛けられ、相変わらず中国語が分からない事を伝えるとそれなりに流暢な英語が返ってきて驚いた。大学生だという彼、台湾の人は比較的英語が話せる人が多くて、驚くばかり。夜市の事とか色々話し、ひとまずSNSを交換し別れた。またいつか彼とも台湾で再会できるといいな、とそんな事を思う。

 

 バスターミナルに戻る途中、ボードウォークの広場では光のショーが繰り広げられていた。街中も綺麗で面白いし、人も良くって、基隆とってもお気に入りの街になりました。