朝、目覚めて部屋のカーテンを開くと海が見えた。昨夜チェックインしたのが夜遅かったので、実は(遠くではあるけど)オーシャンビューだったのかと今更ながらに気付く。昨日は利尻島巡りで1日を費やしてしまったので、稚内周辺を見るのは今日午前中、つまりは正午、飛行機に乗るまでの時間しかない。
早速最近の旅の恒例になっている朝の散歩へと出掛ける。
宿周辺はちょっとした飲み屋街があり、少し離れてしまうと大きな家とゆとりある道路が広がり、これも北海道らしい景色と言えるのではないだろうか。
暫く歩くと海沿いの道に出て、更に進むと”稚内港北防波堤ドーム”が見えてきた。ローマ建築風の堅牢な防波堤だ。さすが北の大地、吹きすさぶ雨や雪が相当のものであるのだろうという事を思わせる。キューバの首都・ハバナの海沿いの道 - 通称マレコンには容赦なく海岸からの高波が打ち寄せていたが(映画ブエナビスタ・ソシアルクラブのオープニングでも有名だ)、あんな状態になったらこの辺りの寒さや吹雪の状態からしてひとたまりもないのだろう。
さて、稚内のこの防波堤ドーム辺りは朝の散歩やジョギングコースにもなっているのか、朝早くにも関わらず地元の人達のそんな姿をちらほらと見かける事ができた。それにしても実に絵になる防波堤ドームである。
暫く歩くと 稚泊航路記念碑があった。「わっぱく」?ではなく、「ちはく」と読むようで、泊は樺太の大泊の事らしく、ここからその大泊まで結んでいた航路があったようだ。稚内から船に乗って樺太まで、なんて実に旅心をくすぐる航路である。因みにこの航路は1945年に幕を閉じたようである。
宿に一旦戻り、朝食を済ませ、この日もまたレンタカーを借り、まずは稚内市内から車で10分ほど走ったところにあるノシャップ岬へ - 途中の公園で小さな女の子が遊具で遊んでいる側に鹿が3匹ほど戯れていた。
公園で遊んでいる子供の側に鹿なんて、ここの子供たちにとってはきっと見慣れた光景でで、大人になりちょっとした都会に出て来た時に公園に鹿がいないなんて・・・という風に思ったりするのかもしれないなんて思うと、何だか恵まれた環境である。
天気が良ければノシャップ岬からは利尻島も見えるようであるが、この日は生憎の曇り空で利尻島、そして樺太ははるか彼方、雲の中で残念ながら拝めず、そこに佇むイルカのオブジェがちょっぴりシュールだ。
あと、ここは夕日のスポットらしく、完全に来る時間帯が今回は合ってなかったのでまたいつか来る機会があったら足を運んでみようかと思う。
ここからまた稚内市内を経由して日本最北端、宗谷岬を目指す。車のナビでセットした時間は1時間後到着予想だったけど、走るにつれどんどん時間が短縮され、結局40分ほどで到着した。
それだけ距離はそれなりにあるけれど、宗谷岬に近づくにつれ、ひたすら長い1本道が続き、そして道もかなり空いているので、左手に海を望みながらかなり快調に走っている事になり、かなり長い時間を走っている感覚に陥るのだが、なかなか到着しない!そんな印象であった。
そして日本最西端、最南端に続きようやく最北端へ到着である。最西端の与那国、そして最南端の波照間の記念碑がある場所は訪れた時には誰もいないほどひっそりとしていたが、最北端のここは広大な駐車スペースがあり、とても多くの人で賑わっていた。
そして間宮海峡と言えばの間宮林蔵氏の石像もあり、遠く自分が発見した間宮海峡を眺める姿は実に凛々しいものであった。
日本海とオホーツク海の分岐点であるのか、ここから見える海はかなり穏やかである。暫くそんな海を眺め、のんびりとした時間を過ごす。
それにしても何もかもが最北端、である。最後給油したスタンドにも最北端の文字、そしてガソリンを入れた記念にと”最北端の地での給油証明書”までもくれた。スタンドに向かう途中に、「日本縦断中 東へ」と書いた紙を手にしたヒッチハイカー2人組みが道路沿いに立っていた。そうか、最北端といってもここが終端の地ではなく、ここから更に道は北海道の東 - 枝幸、紋別、網走、そしてその先へと続いていのかと、今更のように気付いた。
なかなか全ては行き尽くせない北海道、いつかの日か道東辺りも旅をしてみたい。