礼文島を後にし午前の船便で利尻島へ行く事にした。 - 何故だか昔から礼文島に心惹かれ、今回も礼文島だけ巡り、稚内に戻ろうと思っていたのだが、礼文島と利尻島は船で繋がっており、午前中に利尻島に行き夕方の船便で稚内に戻る事も可能だったので、折角の機会なので訪れる事にした。
またいつか来る事ができる、と思っていても再訪する事が難しかったりするのは旅の常であるし、何より両島が船で結ばれているのは喜ばしい!時折、地方の島を訪れた際に、隣同士の島でも船で結ばれておらず、一旦メインとなる港に戻ってUターンする形で行かなければならない島もある事を思うと、稚内、礼文島、利尻島は旅をしやすい航路が組まれているように思う。感謝感謝、である。
ー 午前10時25分、船は香深港を離れ、利尻島の鴛泊(おしどまり)港を目指し出発。この日の香深港周辺はやはり霧に覆われ、最後、島の姿は船が離れるにつれ霧の中へと消えていった。
礼文島から利尻島までは僅か45分の距離である。しばらくすると遠くに利尻富士が見えてきた。標高約1,700mである。かなり高い。礼文島は海底隆起で出来た島であるのに対し、利尻島は火山活動によって出来た島である。こんなに近い両島であるのにその成り立ちが全く違うのは面白い。
火山島である為か遠くから見ると、そして島内を車で走ってても思ったけど、島の形状がどこか以前訪れた伊豆諸島の1つ伊豆大島と似ているような気もしてくる。
ここもやはり雲が多そうであるが、船が港に近付くにつれ、山頂付近の雲が取れ、雲の合間に利尻富士の山頂が姿を現してくれた。まるで海上に浮かぶ富士山のようである。
到着した時には利尻島も曇り空であったけれど暫くすると晴れてきた。そして日差しが強い。ここ鴛泊港も島の北側に位置するのだが、島の北側は快晴なのに、南に行くと天気が崩れるという、礼文島と似たような天気であった。島の北側と南側でこんなにも天候が違うとは実に不思議である。
先ずは腹ごなしという事で、フェリーターミナル近くにあるお店で海草利尻ラーメンを食す。とっても美味しかったが、さすがに夏にラーメンは暑かった。
利尻港周辺は礼文島の香深港周辺と比べると弱冠賑わいをみせていた。利尻島の方が人口も多いし町というか、島の印象としてこちらの方が栄えているような気もする。港からは利尻富士がくっきりと見渡せ、海に突き出すように島のような岬のようなものも見える。これが後々、ペシ岬だという事を知ったという感じで、相変わらず、何も情報なしで、ひとまず車を借り時計回りで島をぐるっと1周してみることに。
今回は稚内港に置いてあった、「利尻島おすすめドライブ」というA4の1枚ものの紙に従い、そこに記載してある名所を巡る事にした。先ずは港から10分ちょっとのところにある姫沼へ - 途中に姫沼展望所があり、ここが目的地?と思ったが、歩いて巡っていた人が更にその先にある坂道をぐんぐん登っていっていたので、その人に従い(途中で当然追い越したのであるが)、坂道を上っていくと姫沼駐車場に辿り着いた。それにしても途中で追い越した彼はこの暑い中港から歩いていたのであろうか。
車を駐車場に停め、少しばかり歩くと姫沼へ - 沼というよりもどこかカナダのロッキーにある湖畔のような美しさだ。いい感じでベンチが置いてあり、近くの売店で水出しコーヒーを購入し、ここで暫く本を読んだり、ぼーっとしたりして過ごす事にした。
来て早々というかまだ1つ目の目的地だけど、ここがかなり気に入ってしまい、ここは最後に来てレンタカーを返却する時間一杯まで過ごすべきところだったかも、なんて思いもしたが、訪れたタイミングで丁度利尻富士も山頂までくっきりと見えていた事だし、まぁいいタイミングで来る事ができたのかもしれない。
離れがたし姫沼を後にし、島の右下辺りにあるオタトマリ沼へ - あんなに晴れていたのにここに来る途中からまた曇り始め、小雨模様になってきた。そしてオタトマリ沼に到着した頃には辺り一面すっかり霧に覆われ、利尻富士は霧の中へ - ここから先、暫くずっと曇り模様が続いた。
近くに、お菓子「白い恋人」のパッケージに描かれているのと同じ利尻富士が望めるという、その名も「白い恋人の丘」という名所があったのだが、行ってみても利尻富士は見えないだろうと思い断念。そうか、うっすらとした記憶を辿ると確かに箱のパッケージには雪山が描かれているような気もする。あれは利尻富士だったのか。
鉛色の空を更に進み、ほぼほぼ島の南端、仙法志御崎公園へ - この周辺とそして到着したからもここにはやたらとウミネコが空を舞ったり、時折道を横断していたり、だった。
公園周辺は見るからに溶岩が流れ出て出来たような形状。そんな景色を見ているとあぁ、やはりここは火山島なんだな、なんて改めてそんな事を思わせてくれる。
ここにはアザラシが1匹だけ飼われているという事でしたが、私が訪れた時は稚内の水族館に貸し出し中ということで会う事はできませんでした。
そこから更に進み、沓形岬公園へ - 地図で見るとここいら辺りはもう島の西側であるが、まだ曇っており人もまばらでちょっぴり淋しい感の岬であった。
ここから先は北海道らしい道というか、ずーっと長い1直線の道が続く感じで、暫くすると曇り空から一転、青空がうっすらと広がってきた。
右手に利尻富士の裾野の広がっている。最初に書いたように伊豆大島辺りの風景を思い起こさせてくれる。どこか道を逸れて車を停め、その姿を写真に撮りたいと思うが、なかなかいい場所が見つからない。おまけに長い一直線で、他の車のスピードに合わせて走っている為に、いいスポットを見つけられない。1本右手に入れそうな道があったけど、見つけた時はもう遅し、という感じで曲がるタイミングを逃し諦めかけた時に左手に曲がれる道を発見
- ここで左折したところ、運よくというか、思いがけずこの道は富士野園地という展望台があるスポットへと続く道だった。丁度いい感じで、駐車場もあり、他数台のバイクや車も停まっている。何ともラッキーだ。この展望所からは利尻富士と夕陽ヶ丘展望所と呼ばれる岬も見える。そして、海を隔ててポシモリ島が見え、沢山のウミネコが群れていた。
先程までの曇り空が嘘のように晴れ渡り、空には渦を巻いた不思議な雲が出ており、大自然を感じさせてくれる光景だ。
島に上陸した際に見たペシ岬がこの夕日ヶ丘展望所と同じ岬に見えたのだが、どうやら別物のようだ。調べてみるとペシ岬も展望所になっていて上まで登れるとの事だったので、時間的な事を考え、夕日ヶ丘展望所に登るのは諦めペシ岬へと向かう事にした。 - 最初、姫沼で会った自転車で旅していた人が、「さっきペシ岬に登ったら天気が良くなり始めここ(姫沼)までやって来た」という話をしていたのだけど、ペシ岬に登る?と実はよく話が分かって居なかったのだけれど、岬の頂上が展望所になっているとこの時ようやく理解できた。
時刻を調べると16時近くである。あいにくレンタカーは16時半までしか借りておらず、ペシ岬の展望所まで登って降りてくる事を考えると16時半の返却に間に合いそうにもないので、一旦港にレンタカーを返しに行く事にした。
船の出発時刻は17時40分である。レンタカーの人に聞くと港からペシ岬の頂上まで登り、戻って来るのに1時間もあれば余裕との事で、ここから歩いてペシ岬の頂上を目指すことにした。
下から見上げるとなかなかの急登 であったけど、麓からは20分ほどで到着。それ程時間は掛からなかった。日も暮れかかっているのもあってから頂上には人もそれ程おらず、暫くすると誰も居なくなり、目の前に広がる利尻富士を1人占めできた。遠くには先程立ち寄った富士野園地も見渡せ、360°ぐるりと眺望が開け、吹き寄せる風が実に心地よい。
港まで降りてくると何故かビートルズの「イエスタデイ」のメロディが流れてきた。時計を見ると17時なので17時のチャイムのようである。なぜイエスタデイ?と思いつつ海沿いを歩きながらフェリーターミナルへと向かう。夕暮れ時、犬の散歩の時間なのか港沿いを散歩している人達も居たりする。島の人達にとって、港周辺に広がる光景とイエスタデイのメロディはもうすっかり日常であり、そんな島の生活はどんなものであるのか気になるところでもある。
17時40分、船は定刻通りに港を離れる - 離岸の際も何やら勇壮な歌が船内に響き渡り旅情をかきたててくれる。ちょっと早足だったけど、利尻島もどんなところか大体把握する事ができた。
礼文島と利尻島、北海道の左上にある小さな島々は地図で見ると点と点のようにしか見えないけど、それらに焦点を合わせて、ぐーっと、グーグルアースのようにズームインしてゆくとあの辺りにあんなお店があったなとか、あの辺りにこんな風景が広がっていたな、なんて想像できるのはやはり実際に訪れて旅をしたからこその想像力だと思う。最近は天気予報なんかで映し出される北海道の地図を見る度にそんな想像をしながら、両島の旅の余韻に浸っているのである。
船はまた2時間ほど走り、暫くすると夕暮れの稚内港が見えてきた。礼文島、利尻島を巡る旅も終わりに近付いてきた。