歩いて渡る国境はいいものである-ラーニガンジ・インド ~ カーカルビッタ・ネパール 2004

 インドに来てからまだ10日程しか経っていないが一旦ネパールへ行く事にした。ネパールの首都・カトマンズに暫く滞在した後、インドには再び戻ってくる予定だ。

 - この日は朝8時に起床し、早くに出発する予定が、いつもの屋台で朝食を摂ろうと出掛けたところ、食材がない、とかでお店の人が買いに出掛けたりしている間にすっかりと遅れてしまい、結局は宿を出たのが10時AM頃になってしまった。

 シリグリ行きのジープを見つけたが出発が11時半という事で、更に遅くなってしまい、結局はシリグリに2時PM頃に到着。標高2,000mを一気に下ってきたせいもあり蒸し暑くなってきた。しかも、町はいつものインドの如く埃っぽい。

 そこから今度は国境の町、ラーニガンジまで走る乗り合いジープを見つけ乗り込む。

 暫く走るとラーニガンジに到着。ジープで走っているとうっかり見落としそうな程小さいイミグレーション、と言っても掘っ立て小屋風の建物があり中に入る。中には木で出来たテーブルと椅子にインド人のおじさん1人が座っており、その正面にある長椅子に旅行者は座り出国手続きの順番を待つという感じだ。

 ここにはコンピューターも何もなく、ぶ厚いファイルにすべて手書きで管理しているようだ。ここのイミグレーションは旅行者も少なく、あっけない程簡単、そして迅速にインド出国の手続きは完了。再び表の通りに出たが、乗ってきたジープは当然ながら待っている事もなく(ネパール人はインド入国はフリーパスの為、出国審査不要でそのまま目的地まで一気に行ってしまう)、かと言って、リキシャやタクシーが走っているという事もなく、誰も私の事なんて気にも留めてない。

 近くに居たおじさんに聞いところ、ネパール側の国境、カーカルビッタまで1kmの距離というので歩いて国境を越えることにした。

 インドとネパールの国境には橋が架かっており、橋から見下ろすと川原では子供たちがクリケットしたり、川の中では水牛が泳いでいたりと実にのんびりした風景だ。周りの山々も緑が濃く、そんな美しい景色を堪能しながらネパールへと入る。天候も何だか涼しくなってきた。

 ネパールの滞在ビザはここで申請し即座に発行してくれる仕組みだ。2ヶ月間有効で値段は30ドル。入国審査もあっけない程簡単に終了し、カーカルビッタには4時PM到着した。

 ここでバスを探していると丁度5時PM発のカトマン行きの夜行バスがあり、そのまま乗り込む事にし、一気にカトマンズへ - しかし、これが失敗だったと後々知る事となる。

 朝1時頃、バーンという何かが破裂する爆音で目が覚めた。何事?と思っているとタイヤがパンクしたらしい。ここで1時間程修理で足止めをくらってしまった。

 バスは再び走り出すが、4時AM近く、今度はバスがどこかに停車し、乗客はみな荷物を手に一斉に降りていく。「もうカトマンズ着いたのかな?そんな筈ないよな、、早過ぎだし」などと思い、周りの人に「カトマンズ?カトマンズ?」と尋ねたが、返って来る返事はネパール語でさっぱり理解できなかった。

 しかし、少数ながらまだ乗っている乗客もいる事だし、どこかの小さな街に着き、そこに住む人達が降りたんだろう位に思っていると、降りた乗客が一斉にみな戻ってきた。後で分かった事だが、この時期、ネパールでは、マオイストと呼ばれる毛沢東主義の社会主義者達が猛威を振るい、過激な行動を起こしていた。
 例えば道行くバスを爆破したりなど。という情報は前もって聞いたいたが、特に旅行者には被害を及ぼす事はなく、それ程危険視はしていなかったのだが、その対策もあってか、幾つかのポイントポイントで乗客の荷物検査が頻繁に行われていたのだ。

 因みにこれも後で知った事だが、夜行バスは特に荷物のチェックポイントが多く、その為にバスは遅々として進まず、それを避け他の旅行者は昼便のバスで移動しているという事であった。この事を知ったのはカトマンズに着いてからで、そうと分かっていたら、カーカルビッタで一泊したのに、、と思ったが後の祭りである。

 そんな訳でバス以外にも通行する車をチェックしているのか、道はとんでもない渋滞を生み出し、まるで日本の渋滞を髣髴させる有様で、一向に進まない。しかも山道で片側1車線、という事もあり進みようがない。

 

 それでもバスはどうにか進んでくれ、カトマンズに近づくにつれ風景は段々と変化し、緑が多くなってきた。遠くの山々には段々畑があり、レンガ造りの家々が見渡せる。なんとなくであるが、ネパールに来たんだなぁと感じさせる情景だ。

 本当に何度も何度もバスは各所で停車し、結局カトマンズに到着したのは6時PMという事で、カーカルビッタからは結局25時間のバス旅であった。ダージリンからの時間を入れるとプラス7時間という長旅で、しかも乗ったバスはリクライニングもできないような直角の椅子だった為、とても疲れた。

 ここカトマンズはそれ程標高も高くなく(標高1,400mmほどだ)、4月下旬という事もあってか、思っていたより暖かい。ヒマラヤなどの登山客の拠点の町となっている為か、町中には沢山の登山用品店のお店が立ち並び、その隙間を縫うようにアジア雑貨店なども軒を連ね、町中は白檀のお香の匂いが漂っている、そんな町だ。

 ここはなかなか居心地が良さそうな町で、暫くここでのんびりしようかと思う。